2021ふたご座流星群を撮る
- 揖斐谷 -
【群流星識別番号 4・11・12・16・17・20・21・22・23・26・27・29・32・35・41・42・43・44】 2021年12月13日23時05分~14日05時20分 計18流星を恒星基準でコンポジット処理 撮影焦点距離 12mm、ソフトフォーカスフィルター使用 α7RM3 + FE 12-24mm F2.8 GM |
ふたご座流星群・火球 月明かりが照らす夜、一瞬真昼のように辺りを明るく照らす火球が流れた。 超広角12mmレンズで長経路を撮影。 この時の放射点高度は76.7度。 【群流星識別番号 46】 2021年12月15日00時46分 12mm、ISO1600、f2.8、15秒、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影 α7RM3 + FE 12-24mm F2.8 GM |
【群流星識別番号 27・28】 2021年12月14日03時32分 ISO1600、f2.0、20秒露光(合成なし)、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影 α7M3 + FE 14mm F1.8 GM |
2021 ふたご座流星群を撮る 第1夜 中間まとめ
2021ふたご座流星群の撮影 【第1夜 12月13日~14日の記録(中間のまとめ)】 揖斐谷にてふたご座流星群の撮影を行った。第1夜は次の通り。 ○撮影 12月13日21時13分~14日05時24分 総撮影時間 8時間11分 ○機材 α7RM3 + FE 12-24mm F2.8 GM、赤道儀は ビクセン AP α7M3 + FE 14mm F1.8 GM、赤道儀は サイトロンジャパン Newナノトラッカー ○外部電源から赤道儀、カメラ本体、結露防止ヒーターへ電力を供給したので、カメラのバッテリー交換によるタイムラグは生じなかった。 2021年ふたご座流星群の極大は12月14日16時。 観察・撮影は2夜行い、第1夜が極大前、第2夜が極大直後となった。 今回は観察者が揃わなかったので、目視による流星のカウントは行わなかった。 第1夜は撮影時間中は快晴で、雲量0という好条件だった。ただし月齢9の月があった。月出は13日13時23分、月没は14日02時05分。14日の天文薄明は05時23分で、月没後の月光の影響がなくなる03時頃から薄明が始まるまでの2時間半は良好な撮影条件だった。 上にこの夜に撮影した流星の一覧を掲げた。 同じセルに掲載した流星は、同一のもの。2台のカメラの時刻は合わせてあるが、露光開始のタイミングでEXIFに記録されるので、同じ流星でも時刻が異なるものもある。 この日に撮影できた流星の総数は45で、ふたご座流星群に属する群流星は42、散在流星は3だった。 画像で識別した群流星の出現状態は、13日の21時台が0個で日付が変わった14日0時台までは最大3流星程度だったが、1時台に9流星と増加し、5時台になっても流星は流れ続けた。14日の1時から撮影終了時まで撮影できた流星数は35流星。03時32分には西天に傾き始めたかに座を横切って2流星が同時に流れ、03時40分には痕を残す流星が流れた。流星痕は1分以上も漂っていた。 撮影中に観察していると、写野外の東天のうしかい座に流星が流れたり、北天の北斗に向かって流れる流星にも気づいた。当然のことながら撮影できていない流星も数多くある。 2台のカメラともに赤道儀を使用しているので、8時間に及ぶ撮影は恒星は天の北極を中心に120度回転する。そのため写野に樹林などが入るようになることは避けられないので、3台目のカメラに円周魚眼レンズ(または対角線魚眼レンズ)をセットした三脚固定撮影を追加する必要がある。もっとも今回は月があるため撮影できる時間は短いだろう、冬型の気圧配置になって揖斐谷では長い時間は撮れないだろう、と油断していたこともある。星空撮影は何があるかわからないので、次回への教訓としたい。 第2夜のまとめは後日掲載するが、2021ふたご群は月照が邪魔をするあいにくの条件にもかかわらず、多くの流星を眼視観察でき撮影することができた。 おおまかな印象としては、ふたご群に属する群流星はいずれも、比較的ゆっくりした経路を流れるふたご群特有のものだった。また第1夜には数多くの流星が流れたが、どちらかというと短経路~中経路の流星が淡々と流れたのに対して、極大から半日経過した第2夜は数は減少したものの、長経路で明るい流星がいくつも認められ、第1夜とは別の群のように思えるほど印象は異なっていた。また第1夜は2流星が同時にほぼ同一経路で流れたり、中には3流星が同時に流れたものもあった。さらに1つの流星が流れた直後に、その後を追うようにほぼ同じ経路で流星が流れる様子も多く確認できた。こういった出現はあまり記憶にないものだった。 |
2021 ふたご座流星群を撮る 第2夜 中間まとめ
2021ふたご座流星群の撮影 【第2夜 12月14日~15日の記録(中間のまとめ)】 揖斐谷にてふたご座流星群の撮影を行った。第2夜は次の通り。 ○撮影 12月15日00時29分~15日05時24分 総撮影時間 4時間55分 ○機材 α7RM3 + FE 12-24mm F2.8 GM、赤道儀は ビクセン AP α7M3 + FE 14mm F1.8 GM、赤道儀は サイトロンジャパン Newナノトラッカー ○外部電源から赤道儀、カメラ本体、結露防止ヒーターへ電力を供給したので、カメラのバッテリー交換によるタイムラグは生じなかった。 2021年ふたご座流星群 第2夜の撮影は、12月14日16時に迎えた極大の約半日後の夜となった。 極大時刻が14日午後であることから、13~14日、14~15日の2晩に多くの流星が流れると期待された。 第2夜も観察者が揃わなかったので、目視による流星のカウントは行わなかった。 第1夜が撮影時間中は快晴で雲量0という好条件であったのに対して、第2夜は上弦を過ぎた月齢10の明るい月があった。月没は3時02分、天文薄明開始は5時23分で、月没後の4時前から5時半頃までの1時間半は良好な撮影条件が期待されたが、実際は5時頃から雲が全天を覆ったため、その後は雲だけが撮影された。 第2夜は14日23時半から準備して待機したが雲が多かった。15日0時から2時まで雲量は7~8、2時から多少晴れて雲量4~5、その後3時頃にかけて雲量0~1と好条件が続いた。4時前後もまた雲量0~1の好条件だったが5時に近づくにつれて雲量は10となった。 上のグラフで分かるように、撮影した群流星数からは2時台にピークがあるように見えるが、全般に雲が多くて参考にはならない。ただし、第1夜が短経路、中経路の流星が主であったのに対して、第2夜はまったく印象が変わり、火球を含む明るい流星や長経路の流星が1時間に1個以上流れた。アルクトゥールス付近を流れた長経路で特に明るい流星は写野外だった。また空を覆う雲が稲光のように一瞬光る様子も見られたので、画像識別した流星以外にも明るい流星が流れた可能性がある。 ふたご座流星群の明るい流星は極大時よりも極大直後の方が多く見られる、とされている。 2021ふたご座流星群の極大時は昼間だったので、極大前の13~14日の夜、極大後の14~15日の夜の、総流星数と明るい流星の出現状況の違いが注目された。 上にこの夜に撮影した流星の一覧を掲げた。 同じセルに掲載した流星は、同一のもの。2台のカメラの時刻は合わせてあるが、露光開始のタイミングでEXIFに記録されるので、同じ流星でも時刻が異なるものもある。散在流星は第2夜の撮影では画像では確認できなかった。 詳述したように第1夜(13~14日)は快晴に恵まれたことに加えて、月没が早かったため多くの流星が撮影された。第2夜(14~15日)は月没が遅かったため良好な撮影時間が短かったことに加えて、雲量の多い時間帯が長時間を占めたため撮影条件はよくなかった。 第1夜のピークは1時台と3時台にあるように見えるが、1時台が明るい月照下における撮影であり、3時台が月明かりの影響から逃れつつあった時間帯であることを考慮すると、第1夜の群流星のピークは1時台と思われる。3時台に続いて4時台が多く撮影されたのも、月没後の良好な星空の下で撮影できたという時間帯によるものと考えられる。 第2夜は撮影された流星数は2時台にピークがあるが、0時から2時までは雲量7~8という悪条件であったことを考えると、この夜のピークが2時台であるとは考えられない。むしろ明るい流星が0時から2時半までの間に3流星が撮影されていることから、この夜の流星数のピークは2時台よりも前だった可能性が高い。 【今後の課題】 ふたご座流星群が私のホームグラウンドである揖斐谷で撮影できることは、あまりない。残念ながらこの時期は冬型の気圧配置になりやすく、晴天率が極端に低くなるからだ。 2021年は12月12日に日本海に伸びる寒冷前線が通過した後、翌13日は大陸から張り出してきた移動性高気圧に覆われる予想天気図から、揖斐谷で撮影できると判断した。15日15時の予想天気図では四国沖に移動した高気圧が南から緩やかに本州付近を覆うと考えられた。13日から15日夕方まで雨の降る心配はなかったが、放射冷却によって夜間の気温低下が霧の発生と、局地的な前線を発生させ、揖斐谷の谷筋が低い雲に覆われないかが心配された。 結果は13~14日の夜は快晴、14~15日は目まぐるしく雲が行き交う天候となった。 上弦過ぎの月は明るく、13~14日の夜は月照が避けられたのは夜明け前の2時間半、14~15日の夜は夜明け前のわずか1時間半だけだった。13~14日の夜は8時間連続撮影したが、14~15日の夜は明るくなる一方の月を避けて14日23時半頃から撮影の準備に入った。 撮影中も月が出ている間は月を写野に入れないようにカメラをセットせざるを得なかったし、眼視観察中も手で月を隠して月光を目に入れないようにしながら流星を観察するしかなかった。 13~14日に撮影できた群流星数は44。8時間の撮影時間で割ると単純計算で約5流星/時間となる。14~15日に撮影できた群流星は27。5時間の撮影時間で割るとやはり約5流星/時間となる。ただし、後者は雲に覆われる時間が長かったが、画像記録できた流星は13~14日の第1夜とほぼ同程度だったことになる。 ふたご座流星群は極大を過ぎた後は急速に流星数を減じることが知られているが、極大が日中であったために極大直前の夜と極大直後の夜では流星数はそれほど変わらないという結果となった。 最も大きく異なっていたのは、極大前の13~14日の夜に撮影した群流星が短・中経路の流星が淡々と流れるといった印象だったのに対して、極大直後の14~15日の夜に撮影した群流星の中には、長経路の明るい流星が1時間に1個以上流れたことである。このような明るい流星は極大直前の夜には撮影されなかった。撮影中も極大前の夜と極大直後の夜とでは、異なる群を撮影しているような感じすらした。 次の機会があれば、1台のカメラは三脚固定で対角線魚眼レンズをセットして撮影するようにしたい。また、月や雲があってもダメ元でできる限り長時間の撮影データを残すようにしたい。今回の15日0時46分の火球は、強烈な月明かりの下で、全く何も期待しないで撮影を続けた中の1枚だった。流れた瞬間に辺りが一瞬明るくなる程のマイナス等級の明るさだった。 流れた直後に画像を確認して大変驚いたが、画像確認中に流星が流れることもあるので、このような事は勧められたことではない。分かっていてもつい見てしまう、それほど驚いたのだった。 ふたご座流星群が終わった後ではあるが、ソニーから α7M4 が発売された。もしこのカメラがあったならば、こちらを電動雲台にセットして 4:2:2 10ビット で撮影したかった、などと妄想はとどまるところを知らない。 私は自然が描く世界を、写真という方法で記録し表現したいと思っているPhotographerにすぎない。天文学については素人で、ましてや流星天文学は全くの門外漢である。しかし、撮影しようとする対象が、どのような姿を私たちに見せてくれるのかをまず知ることが、撮影者には大切なことであると信じている。ただ写ればよいとか、人目を引く「写真」だったらそれでよい、などとは全く思わない。どのような写真が撮影できるかは、撮影者の問題意識と力量にかかっている、と思っている。 理屈っぽくて、なかなか受け入れではもらえないかもしれないが、長く自然と歴史と文化を学ぶ世界を見続けてきた中で思うことである。 歳のせいか最近いろいろ思うところがあって、関係のない独り言をつぶやいた次第。 それにしても恥じ入るばかりは、自分の勉強不足。 反省を生かして、精進したいと思う。 (20211227 篠田通弘) |